王子がお家に住み着いた!

1.それはそれはとても美しいお人形····ではない

タンザナイト王国には公爵家が4つあるが、その中でも女の子がいるのは我がライス家だけだった。

王国唯一の公女、エメラルド・ライス。
それが私の名前。

少し年の離れた兄二人からも、また他の家々からも唯一の公女である私はそれはもう大層可愛がられた。

欲しいものは何でも手に入った。
甘やかされすぎていたと言っても過言ではない。
手に入らないものなんてないと信じて疑わなかったし、実際欲しいと口に出したモノは全て手に入った。



それは私がまだ5歳の頃だった。
可愛いお人形を見つけたから欲しくなった。
ーーーそれだけの軽い気持ちだった。


輝く銀髪にルビーを嵌め込んだかのような瞳。
·····一目で欲しいと思った。

「気に入っちゃったわ!私のお人形さん!欲しいわ欲しいわ、絶対持って帰るわ!!」
「え、エメラルド!?な、何を、何を言っているのかなウチの娘は!?」
「欲しい、欲しいわ!お父様、お願いっ」
「いや、あの御方はお人形じゃ····っ」

今思い返せば、あれほど焦った父は初めて見た。
それはそうだろう、私が欲しがった人形は···

「構わないよ」
「なっ!?な、な、何を仰られているのかルイーズ殿下っ!?」

タンザナイト王国の長子、ルイーズ・タンザナイト···一国の王子様だったのだ。
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