身代わり婚約者との愛され結婚
 私室に戻ると、メイドから花束を受け取ったハンナがキレイな花瓶にいけてくれていて。
  
 
“届けに来ただけって言ってたけれど”


「キレイなお花ですね」
「えぇ」

 その花瓶から、一際紫の濃い一輪を手に取った私は花の香りを楽しむように顔へと近付けた。


“……どういうつもりでこの花を選んだのかしら”

 きっと選んだのはレヴィン様。
 
“だって婚約してから一度も顔を出さない婚約者がわざわざ私のために花を選ぶハズがないもの”


 彼の瞳に似た色のそのスカビオサの花を眺めながら、私はぼんやりとそんなことを考えるのだった。
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