身代わり婚約者との愛され結婚
 冷たい水が美味しく感じ、気付けばコクコクとすぐに飲み干していた。


 危ないから、と空になったグラスをすぐに回収したレヴィン様は、ベンチに座っている私とベネディクトから離れバルコニーとを繋ぐ扉の前に一人まるで見張りのように立つ。
  
“二人きり、という状況を作らないという配慮ね”

 それでいて落ち着けるよう距離も取るというその細やかな気遣いが少し嬉しく――そして、この離れた距離が寂しく感じる。
 

“次に会うときは、いつもの距離であの紺色の髪を見れるかしら”

 なんて内心思いつつ、休んだことで少し回復した私はなんとか最後まで自分の足で立ち、この成人のパーティーを終えたのだった。
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