身代わり婚約者との愛され結婚
 私が無理やり重ねたのとは全然違う、優しく重ねるだけの口付け。
 それがなんだか物足りなくて顔をレヴィンの方に向けると、今度は噛み付くように深く唇が重ねられた。

「ん、んんっ」

 何度も角度を変えて口付けを交わしていると、そっと彼の舌がつつくように私の唇を刺激する。
 まるで促されるように少し唇を開くと、そのままぐちゅりと一気に舌が口内に入れられて。

 レヴィンの舌が絡み、強く吸われると私の口から熱っぽい吐息が漏れる。
 その吐息すらまるで補食するようにより深く口付けを交わし、そんな熱っぽい時間に脳がじわりと痺れるような感覚に襲われた。

 
“最後まではしないって言ってたけれど”

 ならばどこまではするのだろう。
 どこまで、してくれるのだろう。

 激しく鳴る鼓動が響く。
 その鼓動が自分のものだけでなく、レヴィンの音も混じっていればいいなと思った。
 
< 54 / 269 >

この作品をシェア

pagetop