アンハッピー・ウエディング〜前編〜
雨上がりに夏来たる頃の章1
一泊二日のハムスターリゾート旅行から帰った、翌日の朝。

俺はこの日、朝からとんでもないミスを犯した。

…と、いうのも。





「…」

目を覚まして、枕元の時計を見て、一瞬時が止まった。

寝惚け眼でぼんやりと時計を見つめ、そして我に返った。

「…やばっ!?」

恐れていたことが起きてしまった。

そう、寝坊である。

普段は目覚まし時計に頼らず、自力で起きていたものだから。

ついうっかり、目ざまし時計をセットして寝るのを忘れていた。

と言うか、昨日帰ってきて、荷物を片付けて洗濯をして。

ベッドに横になるなり、そのまま寝ちゃったんだよ。

スイートルームのふかふかベッドも良いけど、やっぱり自宅の、自分のベッドが一番快適だよなぁ…って。

そんなこと考えてたら、そのまま寝落ち。

俺はアホか。

昨日の夜、旅行の疲れで寝過ごしたら困るから、明日は目ざまし時計セットしておこうと思ってたのに。

案の定。案の定寝過ごしたぞ。

いつもは、朝にお弁当作ってるけど。

今日はとてもじゃないけど、そんな余裕はなかった。

申し訳ないが、寿々花さんには昼休み、カフェテリアを利用してもらうとして…。

つーか、寿々花さんは何やってんの?

もしかして、あの人もまだ寝てる?

飛び起きて、寿々花さんの寝室に駆け込むと。

案の定寿々花さんも、すやすやと夢の中だった。

「起きろ!寿々花さん、遅刻するぞ!」

「ん〜、むにゃむにゃ…。ハムスターが一匹、ハムスターが二匹〜…」

何の夢を見てるんだよ。

どうやら、まだ旅行気分が抜けてないようだな?

「ハムスターは良いから、起きろって!遅刻!」

俺は強引に寝袋を揺さぶって、寿々花さんを叩き起こしたのだった。
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