アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「ふーん…。遠足か…」

幼稚園…いや、小学校低学年の時以来だな。

修学旅行ならあったけど、中学校では遠足はなかった。

それに小学校でも、三年生以上は遠足じゃなくて社会見学だった。

「何だよ。反応うっすいなー星見の兄さん」

「いや、別に…。そういう訳じゃないけど」

「楽しみじゃないのか?」

楽しみ?

「何処に行くのかによるだろ。行き先は…」

「まだ決まってねぇって。調整中だってよ」

ふーん。

「何処行くんだろうなー」

…雛堂がわくわくしてるところ、悪いんだけど。

正直、あまり期待しない方が良いと思う。

折角楽しみにしてるのに、水を差したら悪いと思って黙っていたが。

「何を期待してるんですか。これまで何度も裏切られてきたのに」

乙無は、容赦なく水を差した。

言っちゃったよ。

「あ?何だと?」

「新校舎の女子部の生徒ならいざ知らず、我々は大したところには行けませんよ。精々、そこの公園で花でも見て、お弁当食べて帰るだけなのでは?」

…充分有り得る。

この学校、男女差別が激しいからな。

男共の扱いが悪過ぎる。

女子生徒達の遠足は、きっと良いところ、楽しいところに行くんだろうけど。

俺達はきっと、乙無の言う通り、近場の公園くらいだよ。

「ぐぬぬ…。言われてみれば、確かに…。でも、一日授業から開放されるってだけで、充分嬉しいじゃん!」

そうか?そんなに授業嫌いか?

「これなら授業の方がまだマシだった!ってことにならなきゃ良いですけどね」

「おい、フラグ立てんのやめろって」

「何処だと思います?悠理さんは」

「さぁ…。…登山とか?」

「このクソ暑いのに山登り…!?そんな遠足は御免だ!授業の方がマシ!」

そうだな。

マジで山登りだったら、皆でサボろうぜ。

何が嬉しくて、この暑いのに運動しなきゃならんのだ。

でも、充分有り得そうなんだよな。この学校の、今までの俺達男子部に対する仕打ちを考えたら…。

「女子部の生徒は何処に行くんだろうな?星見の兄さん、嫁ちゃんから何か聞いてる?」

嫁ちゃんって。

「さぁ…まだ聞いてないけど…」

「海外に連れてってくれとまでは言わんけどさー。少しは男子部の生徒にも、女子生徒の半分で良いから金かけて欲しいよなー」

「…」

…それは無理なんじゃね?

望むべくもない待遇って奴だ。

登山にしろ何にしろ、少なくともエアコンの利いたバスで移動出来る場所なら、何処でも良いよ。
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