青の中に閉じ込められて
多くの人を乗せた飛行機が滑走路に着陸する。その様子を、空港の大きな窓からスマホのカメラを向けて撮影している女性が一人いた。

「うわぁ〜、かっこいいな!」

目を輝かせ、何度も撮影ボタンを押しているのは水谷葵(みずたにあおい)。介護士としてグループホームで働いている。そんな彼女の休日の楽しみが、空港に来て飛行機の写真を撮ることだった。

「水谷さん、今日もいらしてたんですか。いい写真は撮れましたか?」

写真を撮るのに夢中になっていた葵は、声をかけられて振り返る。そこにはパイロットの制服をきちんと着こなした高身長の華やかな顔立ちの男性が立っていた。彼の名前は星空彼方(ほしぞらかなた)。この空港でパイロットとして働いている。

「はい!バッチリ撮れてます!」

葵は笑いかけ、彼方に写真を見せる。特別写真を撮る技術があるわけではない。しかし、彼方は一枚ずつ写真を見ては褒めてくれる。

「ここのアングル、すごくいいですね!素敵な写真です!」

「えへへ。ありがとうございます!」
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