「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
 しかし、彼はキラキラ光る美貌をこちらに向けて待ってくれている。

 その表情は、仔犬みたいに期待とほんのわずか不安が入り混じっている。

 負けてしまった。

 この一回だけ。この一回だけよ。わたしは、夫がどう思っていてどんな態度を取ろうと結婚しているのだから。人妻は、夫以外の男性と腕を組んで歩いていいものではない。

 この一回だけ。そう、この一回だけ。ジョフロワは、あくまでも紳士としてレディをエスコートしようとしている。ただそれだけのこと。そんなわたしたちに、やましいことなどどこにもないのだから。

 そう何度も自分に言いきかせ、彼の左腕に自分の右腕を絡めた。

 そして、カフェへ向かった。
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