「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
(それに、ジョフロワがフェリクスを殺す?)

「殺す」という不穏きわまりない単語が、わずかながら混乱を押し返す。

(ああ、なるほど。それでわたしを利用しようとしたわけね)

 これまでのジョフロワのわたしに対する態度や言葉のひとつひとつを、出来うるかぎり思い返してみる。

 ひとつひとつの欠片があわさっていくと、ようやく大筋が見えてきた。

 それは、ストンと自分の胸の中に納まった。それこそ、キッチリくっきりスッキリ見事なまでに。

 ジョフロワは、わたしを利用していたのである。慈善病院への援助や食堂やカフェでおごってくれたこと、交流のすべて、わたしを利用してフェリクスを煮るなり焼くなりしようとしたのだ。

 結論に至った途端、テンションが急激に下がった。テンションだけではない。感情や理性そのものがどん底にまで落下した。

 正直なところ、「それはないわよね」と思った。そして、「残念だったわね」とも。
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