「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「フェリクス様、ひどいことを言って申し訳ありません。いまの一連のひどいことは、建前です。本音を言います。寂しかった。ずっとずっと寂しかったのです。あなたに会えないことが、あなたの声をきけないことが、寂しくて仕方がなかった。だから、慈善病院の運営に奔走し、領地経営に奮闘しました。寂しさを紛らわせる為です。大人になってから、会ったこともないあなたのことが恋しくてならなかった。パトリスとピエールの話をきいて、思い出したのです。子どものとき、まだ少年だったあなたに会った瞬間、あなたに恋をしたことを。わたしって、きっとませていたのですね。それから、いろいろあってそのときのことは記憶から消えていましたが、心のどこかに残っていたのだと思います。だからこそ、会ったこともないあなたのことが気になっていましたし、あなたにどれだけそっけなくされても、それでもまだあなたのことが気になり続けたのです。そして、寂しいままだったのです」

 言いながら、あらためてそうだったのだと実感した。

 本能的に、わたしもまた彼のことを想っていたのだと。
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