「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「お、怯えてなんかいないぞ」

 臆病者扱いされたピエールが言い返す。

「アイ、と呼んで下さい。みなさんにもそうしてもらっています」
「失礼いたしました。では、パトリスと。こんな顔ですが、あなたよりも年上です」
「えっ、そうなんですか?」

 いまのパトリスの言い方だと、彼はまるでわたしの年齢を知っているかのようだったけど……。

 推測や思い違いなどではなく。

 童顔でだれからもそう思われるでしょうから、だれにたいしてもそのように言っているのかもしれない。

 そこは、気にとめないでおく。

「パトリス、気をラクにして下さいね。すぐによくなります」

 そうひと言添えてから彼の傷を負った手を握り、力を解放した。


< 93 / 294 >

この作品をシェア

pagetop