「きみを愛することはないし、きみから愛されようとは思わない」と宣言した旦那様と宣言された私の結末~それでしたら旦那様、あなたはあなたが真に愛する人とお幸せに~
「アイ様、ありがとうございます。正直なところ、いままでは癒しの力など信じていなかったのです。ですが、ほんとうにすごい。そうだ。閣下、これなら閣下の……」
「おいっ、パトリス」

 興奮気味のパトリスを、ピエールが制止した。

「閣下の?」

 パトリスが言いかけたことを口の中でつぶやいてしまった。フェリクスの方に顔を向ける。

 ちょうど朝の強烈な陽光が射しこんできた。その光の中、フェリクスのごつい顔が真っ赤になっているように見えた。

 視線が合ったような気がした。が、彼はそのまま踵を返した。

 大きな背中が遠ざかっていく。

(嫌われている、なんてレベルじゃないみたい)

 その背中を見ながら、知れず溜息をついた。
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