黒髪の眠りの聖女は永遠の愛を誓う
第一章 聖女の目覚め
私は美しい聖女様に恋をした。

この王国へ舞い降りたあなたに10年間想いを募らせている。
私はあなたを見つめ、一方的に話し掛けることしかできていない。
なぜなら、その聖女様は優しい表情を浮かべながらも、今もなお眠り続けているから…。


今日も『聖女の間』へと向かい、扉の前で手を止める。

「やはり…!」

神聖な気配が強まった!
空気がピンと張り詰めている。
私は白く大きな扉を凝視したまま動けずにいた。

「ウィリアム殿下?」

もしかしたら…。
この願いはもう何度目だろうか。
逸る気持ちを抑えながら聖女の間の扉を開く。

部屋の奥にはこのエーデル王国でしか採れない水晶で造られた聖女様の寝台がある。
階段を数段登った先、少し高い位置に造られた聖女様が眠られている寝台には聖女様をお守りする為のバリアがあり、この部屋に入れる王族でさえも近づけない神聖な場所。

静かに歩き、寝台へと進む階段の手前で立ち止まった。

朝の陽の光が寝台に優しく照らされ、周りにはたくさんの薄桃色の花がヒラヒラと舞い落ちてきている中で眠る聖女様。
まるで目覚めの時を知らせるかのような幻想的な光景に胸が高鳴る。

「……なんて美しい」

そして、静かに穏やかな顔をして寝台に眠る、長く艶やかな黒髪の少女はゆっくりと瞼を開いたのだった。



< 1 / 257 >

この作品をシェア

pagetop