14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 どこへ行くのか皆目見当つかず、視線を運転席へやると、大和さんの口元が緩む。

「そんな恨めしそうな顔で見るなよ」

 なんだか楽しそうな彼だ。

「けっこう秘密主義ですよね?」

「秘密主義っていうか、紬希の反応がかわいいから、ついな」

「すぐかわいいって言いますよね? 思ってもいないこと言わないでください」

「そう思っているから」

「え……?」

 驚きで目を見開いて大和さんを見る。

「まあともかく、これから行く場所でちゃんと話をする」

 真面目な顔で約束されると、安心できるような、不安でもあり、複雑な気持ちだった。

 二十分くらいが経ち、以前父が転勤になるまで住んでいた近くを車が走っていることに気づく。
 偶然……?

 久しぶりの土地にうれしくなる。

「大和さん、私が住んでいた近くです」

「知ってる」

「知ってる……?」

 そんなことは履歴書に書いた覚えがないので、大和さんが知っているのはあり得ない。

「着いた。降りて」

 困惑しているうちに、公園横に車が止まった。

「ここ……」

 そこでピンときて、言葉を失った。二の句が継げないでいるうちに、大和さんは車から降りて助手席に回りドアを開けた。

 地面に脚をつけ車から出るも困惑していて、隣に立つ大和さんを見上げる。

「大和君……?」

「そう。忘れていなかったんだ?」
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