14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 小学生低学年の子供たちが水道で遊んでいるのは、近くのベンチにいたから読書をしながらでも把握していた。

 少しして子供たちの「わー」という声がして、視線をそちらへ動かしたとき水道は噴水のごとくものすごい勢いで宙を舞っていた。

 子供たちはヤバいことをしでかしてしまったと思ったのか、水道から逃げていったが、そこへひとりの女子中学生がやって来たのだ。

 びしょ濡れになりながら蛇口へ手を伸ばす彼女は何とか閉めようとしているが、さらに水が吹きあがった。

 仕方なく俺はベンチから水道に近づく。

「あれ? 逆方向まわしちゃった? こっちじゃない?」

 などと、声が聞こえてくる。もう彼女は頭から制服までびしょ濡れだ。なかなか止められないところへ俺は手を伸ばして蛇口をくるくる回した。

 噴水のようだった水は次第に小さくなり止まった。

「ありがとう!」

 すべてがびしょ濡れなのに、屈託なく笑って礼を言われた瞬間、彼女に惹かれた。

 その頃、素直じゃない俺は「笑っている場合じゃないだろ」と素っ気なく対応した。

 俺も彼女ほどじゃないが濡れている。

「だって、この状況じゃ笑うしかないでしょ」

 彼女はセーラー服の紺色のスカートを絞る。

 この制服はこの公園を境にした学区域の第二中学校のものだ。
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