王家の影はポンコツ令嬢!はじめての任務で×××
なんて、ディーデリック様がにこにことされていたので深く気にすることはやめた。



そんな彼の案内で通されたのは、どうやら客室ではなく彼の執務室のようでー⋯


「あの、私ここにいてもいいのでしょうか?」
「もちろんだよ、クリスティナ。本当は客室に案内するのがいいんだろうけど、ここには俺しか住んでないからね。使用人も減らしているんだ」

コト、と目の前に置かれたカップから甘い紅茶の薫りがし横を見上げると、私が潜入した時にディーデリック様の寝室まで案内をしてくれたメイドがいて。

「ディーデリック様のご両親はより王都に近い別宅に住まれておいでなのです」
「まぁ、そうなのですか⋯!」

“つまり彼は一人で住んでるのね⋯?”

もちろん使用人も住んでいるのだろうが、彼の許可なくプライベートの中にまでは入らない。
この広い家で孤独を感じるなんて、それはとても悲しいことー⋯


紅茶を入れてくれたメイドが部屋から出たのを確認し、私はソファから立ち上がる。
そして彼の手をぎゅっと握った。


「大丈夫ですわ、私がおりますから!」
「ん?」
「私がディーデリック様の影となりずっとお支えいたします!!」
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