一途な恋
 思えば幼稚園の時、大好きだったロミオ君とどうしても手を繋ぎたいがために、こっそり背伸びをして背の順を偽ったことがあった。そして一年越しの念願叶い、ロミオ君とペアの座をゲットし手を繋ぐことが出来た。ロミオ君の手は柔らかくて温かかったけれど、途端に露三尾(ろみお)君への気持ちは冷めてしまった。
 小学三年生の時には、ずっと気になっていた転校生の唯斗(ゆいと)君が自分に気があることを知ると、またしても興味を失った。
 中学二年生の時には、バスケが上手くて長身で超絶イケメンと他校からも人気があった森本君から告白されたけれど、既に野球部の小倉君を一途に思い続けていたため、イケメン森本君には目もくれなかった。それから更に一年間思い続けた結果、小倉君への恋が実り付き合うことになったのだけれど、たった一週間で自ら別れを告げた。
 どうやら、手に入れた途端、相手に魅力を感じなくなるような性質らしい。
 追いかける恋愛が自分の性分には合っているのかもしれない、と華怜は気付いた。

「華怜ちゃん!」
「――ッ!!」
「どうしたの? 化け物にでも追いかけられてるみたいな顔して」

 突然現れた営業部の京本(きょうもと)政宗(まさむね)に呼び止められた。

「あ、京本君! ううん、何でもないの」
「あ、そうそう。華怜ちゃんさぁ、もうすぐ誕生日だよね?」
「ああ、うん……」
「お祝いしたいんだけど、この前話したイタリアンの店とかどうかな?」
「ああ、えっとぉ……」
 
 華怜はこの場からも逃げたくなっていた。
 気持ちはもう既に別の方を向いている。
 陸翔ではなく、京本でもなく、別の――

「あ、高杉(たかすぎ)さん! お疲れ様です」

 華怜は品質管理部の高杉(たかすぎ)健吾(けんご)の元へ笑顔で駆け寄る。

 幸とも不幸とも言えない一途な恋をしている華怜は、たった一人の大好きな人を追いかける。

 そして……

 恋に落ち、華怜ロスに陥った男たちは増加の一途(●●)を辿る。





【完】
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