愛を私にください 〜愛されたい姫〜
side 理緒

「―人殺しのくせに」

奈也がスミレに『言ってはいけないこと』を言ってしまった。

あいつのトラウマ。
触れてはいけない一面

たとえ、あいつが礼美をいじめてたとしても、これだけはふれていなかった。

触れてかいけなかった

でもたった今、奈也がその『ルール』を破ってしまった

「はっ、はぁっ」
やば、スミレが過呼吸状態になっている。

思わず、手を差し伸べた。
なんだか、その姿が可哀想に思ったから。
でも、スミレは僕の手を取らなかった。

―パシッ

振り払われた。
その時のスミレの目には何もうつしていなかった。ただただ、怯えの色が滲んでいた。
この姿を見た時、僕は一瞬だけど、本当は、
―スミレは礼美のことをいじめてないんじゃないか、と思ってしまった。
本当に、一瞬だけど、

ねえ、スミレ、お前は僕たちを裏切ったんだよね?
どうして、
どうしてそんなに悲しそうな目をするの?

僕は、君がわからないよ、

もしも、もしもスミレが僕たちを裏切っていなかったら、僕たちはどこで間違えたの?

礼美、君はいじめられてるんだよね…?
僕たちの、判断は、間違ってないよね。
もう、なにもかも、わかんないよ…。
< 28 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop