あなたが好きだと言いたかった。
 翌朝、登校して来るなり優紀は青山君の机へ、、、。
周りをチラチラと見回しながら机の中に小さく折りたたんだ手紙を入れました。 (よし。)
そして何事も無かったような顔で自分の机へ向かうのでした。 後から他の生徒たちも入ってきました。
「おはよう。 優紀 早いなあ。」 「いつものことよ。」
「え? いつもベルギリギリに飛び込んでくるお前がか?」 「そんなこと言わないの。 あんただってギリギリでしょうがよ。」
「今宮さん、それは無いよ。」
今宮るり子と相沢和夫がいつものようにバトルをしていますと、青山君が澄ました顔で入ってきました。
「今日も賑やかだなあ。 最初はどうなるかと思ったけど、、、。」 「さすがは転校生。 慣れるの速いなあ。」
「そうかな? 慣れるっていうより慣れなきゃしょうがないって思ってるんだけどね。」 「そりゃあ、こんなバカばっかり揃ってるクラスだもん。 大変よねえ。」
るり子は澄ました顔で相沢を見やりました。 「また俺かよ。」
「あんたしか居ないでしょうが、、、。 学校の中にエッチな本を持ってくるのは。」
「あれって相沢だったんだ。 まさかとは思ったけど、本当にやるんだなあ、こいつ。」 「だから何だよ?」
「悔しかったらなあ、優紀でも口説いてみろや。 そしたら認めてやるよ。」 「お前だって口説けねえのにか?」
「私、相沢君には興味も関心も無いから。」 「だろうなあ。 お前は青山にキュンキュンだもんなあ、今。」
 みんなが盛り上がっているところへ、副担任の山沼祥子先生が入ってきました。
「起立ーーーー。 礼ーーーー。 そして着席ーーーー。」 「このクラスはいつも賑やかねえ。」
「だってーーー、問題児が10人も居るからさあ。」 「では国語の授業を始めますよ。」
教科書を開いたとたんに今まで賑やかだったクラスはしんと静まり返るのでした。
「吉村さん、今日の範囲を読んでくれる?」 そう言われても困るんですけど、、、。
「真由美には無理だよ。」 「じゃあ、お前は読めるのか?」
何だか分からないが、本当にやる気が有るのか無いのか、、、。 青山は教科書に目を落としたまま、、、。
それでも机の中をゴソゴソと漁っています。 何かを見付けたようですが、、、。
あんまり小さく折られているものだからゴミだと思ったのでしょう。 ポイっと放り投げてしまいました。
それを拾った山沼先生は苦笑いをして黒板に向かいました。
いい加減に縮こまっているのは優紀のほうです。 名前こそ書いてないからいいけれど、、、。
 青山はというと、そんな優紀の気持ちも知らないままノートに走り書きをしています。
 やがて授業が終わってあの賑やかさが戻ってきました。 「なあ、青山さあ何か捨てなかったか?」
「ゴミだよ ゴミ。」 (えーーーーーーー、、、あれはゴミでも何でもないのに、、、。)
澄ましている青山を見て優紀はますますドキドキするのでした。
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