姉の婚約者はワルイ男
「松葉さん、意外とケチですね」
「ケチじゃないですよ、ゆずさん。思い出せないゆずさんの方がひどいですよ」
「ひどくないですよ。ヒントください、ヒント」
「ヒントもダメです」
「やっぱりケチだ、松葉さん」
こんなやり取りをしながら、食事会の席に戻った。
そんなわたしたちを見ながら姉が「仲いいわね」と微笑んでいる。
「違うの、お姉ちゃん。松葉さんがケチで何も教えてくれない」
「そんなことを言う、ゆずにはもう何も教えません」
「そうじゃなくても、教えてくれなかったくせに」
わたしと松葉さんはどんなときでも、こうしてわいわいやっていそうだ。
そんな未来が簡単に想像できてしまう。
姉が最後に「次はゆずの番だね」とわたしたちに微笑んだ。