花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
「大事にするし、浮気もしない。ご両親も安心されて見合い攻撃も終わるぞ?」


「覚えていたんですか……?」


勢いで話しただけの身の上話なのに。


「当然だ。お前を怖がらせるものや憂いは全部取り除く。契約だからな」


なんでずっと欲しかった言葉をあなたが今、口にするの?


冷酷だと思った瞬間、甘い目と優しい態度を向けてくるなんてズルい。


あきらめるための要素を私から取り上げないで。


「契約内容はよくわかりましたが、葵さん側の条件やメリットはどうなっていますか?」


心を落ち着かせるため、敢えてビジネスライクな言い方をする。

そもそも話を聞いていると、彼への負担が多い気がする。


「俺の財産と名声目当ての女との結婚を回避できるじ、なにも求めないお前を気に入っている。契約内容以上のものを求めないことだ」


わかっているのに、契約結婚、とはっきり宣言され心の奥が鈍く軋む。


「ほかには美津との円満な別れを世間に示したい。両家の確執だとか好き勝手な想像をされているからな」


「出会った日は、加賀谷さんの婚約パーティだったんですね?」


尋ねる声が震えていないように、冷静だと誤解されるようにと願う。


「ああ。俺たちは然るべき時期がきて別れた」


どういう、意味?


葵さんが恋心を隠せなくなった? 


加賀谷さんに好きな人ができたの?


確認したいけれど簡単に口にできない。

出会った夜もだが、加賀谷さんの話になると葵さんの表情が険しくなり、首を突っ込むなと線引きされている気がする。
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