別れさせ屋に依頼をした私の結末
寺尾の思いつめた表情が気になる私は、重いドアを閉めきらず、ドアノブに手をかけたまま、去ったふりをして姿を隠す。

私がいなくなるのを確認したのか、しばらくしてから「はぁ」という並木のため息が聞こえてきた。

「ばっかじゃねーの、お前。今の松山に次の話とか……。考えてなさすぎだろ」

「……うるせー」

並木らしくない厳しい言葉と、寺尾らしくない落ち込んだ声。

知らなかったふたりの素顔に触れ、ドアノブを持つ手に力がこもる。

「……いつから?」

「あ?」

「松山のこと、いつから好きだったのか聞いてんの」

並木の発言に、胸が大きく波を打つ。

動揺する間も無く、寺尾のふてくされた声がした。

「めっちゃ最初から」

ドッ、ドッ、ドッ、と心臓の音が早くなる。

「……でも、彼氏いたから狙ってなかったし」

付け足された言葉で、初めて話した日のことが頭の中でよみがえる。

“な、松山って好きなやつとかいんの?”

“彼氏いるよー”

それとなく聞かれていたあの瞬間の、寺尾の私を見る目が、まさかそういう感じだったなんて。
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