別れさせ屋に依頼をした私の結末
「俺……美奈のこと、ちゃんと好きだったよ」

最後には、私にもそんな言葉をかけてくれた。

にごすことなく、正直に過去形で口にするようなところは、あの頃と全く変わらない。

空が暗くなり始め、辺りがライトアップされていく中、彼はそっと抱きしめてくれた。

大樹の肩越しで見上げる、カラフルな大観覧車。

“美奈、付き合って?”

あのときの大樹を思い出してから、私はまぶたを下ろす。マチにも話さなきゃ、と心の中でつぶやいて。

だけど、次の瞬間……。


“松山のこと待ってる”


昼間の寺尾のことを思い出した。

「……」

大樹との最後の時間だというのに、頭では別の人を思い浮かべているなんて。

どこまでもずるい私は、きっと、どう頑張ってもマチのようにはなれないのだと思う。

けれど、それでいいやと思えるようになったのは、この恋が終わってしまったからだ。









番外編「マツヤマミナ」
【完】
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