逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「そんな！　だったらここはどうなるの」
「だから一刻も早くソフィー様を連れ出したほうがいいんです。負傷兵や侍女も含めて全員をね」

　ヴェンの言う通りだった、ここら一帯は大きな危険をはらんでいる。

「洞窟を出てどこへ？　元のラクレス邸に戻れというの」
「あそこは敗残兵の通り道です。だからもっと危険なんだ」

「それならどうすれば？　負傷兵は大勢いるのよ」

「うん。でもまあ、・・何とかなるでしょう、たぶん」
　詰め寄られて頭をかいている。

「あなたね、さっきは危ないって言ったでしょう。なのになんだって急に」

　そのヴェンは洞窟の入口を見ていた。
　数人の影が近づいている。

「ソフィー、すぐここを出られるか」
　影はアーロンだった、側近を従えて近づいている。
　
　駆け寄りたいのを我慢して、
「ここを出るのですか」
　
「負傷兵が気になるのだろう。大丈夫、彼らも引き取るつもりだ。それで屋敷を改装しているのだ」
「でも四十名ですよ。いくらあなたのお屋敷が大きくても」

「それは考えてある。今日は君だけだ、負傷兵は明日迎える事になっている」
< 257 / 463 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop