逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
あの日の出来事
 最後に残ったのは十人だった。
 彼らは重症で自分では歩けない。
 
 思案して国境のラクレス兵に助けてもらうことにした。周辺の住民に頼めばその者に危害がおよぶと考えたからだ。

 連絡を取ると兵は躊躇なくやって来た。
 てきぱきと動いてくれる彼らを見て、ソフィーは胸が痛んだ。自分の判断は正しかったのかと。

 任地を無断で抜け出すことは軍規違反だ。兵らは『ほんの半日のことだから』と笑ってくれた。
 しかし果たして無事にすむだろうか。

 負傷者を二台の馬車に乗せ、馬車が入らない山道は兵が背負ってくれることになっていた。

 二台目の馬車が出発した後、ぬっと顔を出す者がいた。
 
 ケイネ伯に命じられたギースだった。
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