君のハグなんていらない!

「ウェーイ、ウェーイ」


「ウェーイ」って何語?

 謎の「ウェーイ」の掛け声が、ハイタッチのパチンという爽やかな音と共に、陽気に飛び交う。
 集まったのは、野球部の全メンバー、応援団、チアリーダー、吹奏楽部の有志たち。そして顧問の先生に、校長先生まで。
 つい先日行われた試合の打ち上げが、学校の家庭科調理室で盛大に行われた。

 校舎の外壁には、最上階から最下層にまで及ぶ、野球部を激励する立派すぎるほどの垂れ幕が掲げられていた。とはいえ、うちの学校の野球部は特別強いわけでも、全国的な注目校でもない。ほんの少し前までは弱小で地味で無名な普通科の高校だった。それが、甲子園初出場を果たしたことで、一気に注目の的となったのだから、浮かれるのも仕方ない。学校の誇りであることは間違いない。

 結果は、初戦敗退。
 だけど悔しがったり、涙を流したりする人はいなかった。みんな笑顔だった。

 甲子園まで行けたんだから、もう満足。

 所詮それが、弱小校野球部の、満足度の絶頂なのだ。
 甲子園の土だけはちゃっかり袋に詰めて持ち帰ちゃって、甲子園を遠足か何かと勘違いしているとしか思えない。

 甲子園に行きたかったすべての球児に謝れ。


< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop