夏の夜、路地裏から始まるひとつの恋の行く末は

失敗したと顔を歪ませる私とは対照的に彼は感情の読めない表情でこちらを見つめている。


「俺は叶華のこと本気で好きだけど?」


「っ…、やっていることと、言っていることが噛み合ってないです。っていうか、ナチュラルに名前で呼ぶのやめてくれません?」

だめだ。顔が赤くなってしまいそう。


強気な口調で喋っていないと彼のペースに飲まれそうになる。



でも…、本気って言ったって信用できるわけがない。


「それに、そういう歯の浮くような台詞は本命にでも言えばいいじゃないですか。」


いつも違う香水の匂いがする彼を、どうやって信じれば良いのです?


バニラ系、ベリー系、フローラル系 etc…。


どれも甘い匂いの香水だけど、どう考えても同じ人がつけているとは思えない。


タイプの違う香水。それ = タイプの違う女の人がいつも近くにいるということ。


< 4 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop