柊星くんは溺愛したい
「杏奈、こっちこっち!!1番前に座ろ?」

沙也香ちゃんに手を引かれ、見学スペースの最前列に腰を下ろす。バスケ部の練習は既に始まっているようだ。

「ねえねえ、今日って風戸くんが来るんじゃなかった?」
「あれー!?柊星くんいなくない?」
「風戸先輩がかっこいいのはもちろんだけど、山口先輩もかっこいいよね〜!!」


周りの女の子たちの声が耳に入る。風戸先輩のこと以外にも山口先輩の話まで聞こえてきて、隣に座る沙也香ちゃんの表情は強ばっていた。



その時、体育館の1番大きな扉が重たい音を立ててゆっくりと開いた。影が1つ現れ、誰もがその姿を見つめる。


「____柊!!お前、遅刻だぞ!!」


山口先輩の声が先立って静まり返った体育館内に響く。しゅう、と呼ばれた人は急ぐ様子もなく歩いて来る。


扉を過ぎた時やっとその人が光の下に来て、顔が露になった。


「風戸先輩だ!!!」
「柊星くんやっと来たぁ」
「風戸くん、こっち見て!!」


女の子たちが一斉に騒ぎ出す。その声を一身に受ける渦中の人は、顔を顰めた。


「沙也香ちゃん……あの人が、風戸柊星先輩?」


「そうだよ!!杏奈が会った人ってあの人?!あの人なの!?」
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