限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 けれど、私は本当はドレスで見えない足は震えているし、手をぎゅっと握りしめて震えを隠すことで精一杯だ。こんな状況で平静に居られる訳はない。

 私は売られてしまうかもしれないけど、ペルセフォネはクインの身柄については言及していない。だから、あの子は助かるかもしれない。

 自分だけならこれから待ち受けるものの恐怖に、気を失っていたかもしれないけど、クインがもし助かる方法があるのだとしたら、私がしっかりしなければならない。

 借金があったって、誰になんと蔑まれようが、弟のあの子が居たから頑張って来られた。

 犯人は誰で、何を目的をしているかを知り……交渉する余地があるのだとしたら、クインだけは助けなければ……。


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