限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

09 距離

「……ギャレット様、今日のお仕事の方はどうなさったんですか……?」

 あの夜、キスというある一線を越えてしまってからの一週間、私とギャレット様との距離は縮まった。

 ええ。本当に、近過ぎるくらいに。

 私が妃教育を受けている部屋にも、ギャレット様が度々訪れるようになったので、各教科を受け持つ教師たちは困惑しているようだ。

 正式な結婚前から王太子にこれほど熱烈な寵愛を受けているのなら、下手な対応は出来ないとでも思ったのか、日々の教育にも教え方が異常に丁寧になってしまった。

 いいえ。そうよね。私たちは婚約者なのだから、こういう恋人同士みたいな関係が普通なのかしら……?

 今も休憩中に二人で庭園に用意したテーブルへ向かい合って座り、良い香りのするお茶を飲み、シェフの新作だという焼き菓子について適当に感想を言い合ったところ。

 私が健康体で特に他の来客もないのなら、ギャレット様の訪れを拒む要素はどこにもない。

 そうなの。私。彼のことを、好き過ぎる設定なので。態度には出さないけど。

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