鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
☆☆☆

洞窟の中での生活はハナにとって初めてのことばかりだった。


「ここは元々熊が暮らしてたんだ。しばらく一緒に暮らしたんだが、やっぱり寿命が短くて先に死んでしまった。それからは俺が暮らしてる」


洞窟は奥へ奥へと続いていて果がないように感じられた。
光鬼は太陽の光が届かない場所で寝起きすることを好んだ。

ハナがここへ初めてきたときに眠っていたのは、光鬼の普段の寝床だったのだ。
それを聞いたハナは少しだけ寝床を入り口に近くして、草木を利用して簡易的な風よけを作った。

そして寝床には枯れ葉を敷き詰めることで、朝になれば太陽の光を浴びて起きれるようにした。


「すごいな人間は」


今まで人間の子供や野生動物としか接してこなかった光鬼は、ハナの提案にひどく感心した様子だった。


「こ、これくらいどうってことないよ」


キラキラと光る瞳で関心され、ハナの頬は赤く染まる。
村の中では生贄になるしか脳のなかった自分が少しでも役立っていることが嬉しかった。


「よし! じゃあ今度は俺が山菜採りを教えてやる!」
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