鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
惹かれる
ずっと山で暮らしているだけあって、光鬼は食べられる山菜が群生している場所をよく知っていた。


「これから冬になると食べ物が少なくなるから、今の内に蓄えておくんだ」


そう言うと取ってきた山菜や魚をさばいて、岩の上に干して保存食を作った。


「すごい。あなたって全然怖くないのね」


魚の切り身を干し終えたとき、ハナはポツリとつぶやいた。
大きな岩に座って休憩していた光鬼が戸惑ったようにまばたきをする。


「村人たちは俺を怖がってるのか?」


ハナは小さく頷いた。


「鬼は怖いものとして伝えられているものなの。だけど、あなたはなんだか違うみたい」


足元に咲いている小さな白い花を摘むと、ハナはそれを光鬼の髪の毛に指した。


「昨日も言ったけど、鬼だって三者三様だ。怖い鬼だって実際にいる」

「そうね。でもそれは、人間も同じってことよね」


ハナは自分を樽の中に押し込めた村人たちの顔を思い出していた。
小さな村だから、その全員を知っていた。

ハナが小さい頃に遊んでくれた人もいた。
仲が悪いわけではもちろんなかった。
それでも人は目に見えないものに怯えた時、どうしようもなく非情になれる。


「どうした?」
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