鬼の生贄になったはずが、溺愛されています
☆☆☆

「ハナを生贄にして3週間近くたつけど、疫病は止まらない。本当に鬼の仕業だったのか?」


村の集会所では誰もが難しい顔をして座り込んでいた。
その中心にいるのは武雄だ。

今日は一向に収まる気配を見せない感染病についての話し合いが持たれることになっていたため、無理矢理についてきたのだ。


「しかし、それしか考えられない」

「まだそんなこと言ってんのかよ! 感染病は風の乗ってどこか他の国からやってきたんじゃないのか!?」


山に囲まれた狭霧村だが、風がふけば隣の国から砂埃が飛んでくることもある。
空気感染する細菌がどこからか飛んできてもおかしくはなかった。


「もし風が細菌を運んできていたとしても、ハナはもういない」


それは武雄の父親の言葉だった。


「どうしてそう言い切れる? 生きていたらどうするんだ!?」

「冷静になれ武雄。生贄になってもう3週間も経つんだぞ。手遅れだ」


父親の言葉に武雄の顔は真っ赤に染まる。


「誰がなんと言おうが、俺はハナを助けに行く」


武雄は総宣言すると、鍬を片手に山へと歩き出したのだった。

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