あなたの仮面の下にあったのは
「最上香奈を手に入れたら俺たちを解放するって言ったじゃないか!」

「そうよ!私たち、何度あなたに協力したと思ってるの?」

翔吾と妻はどこかくたびれた様子であり、やつれている。まるで長年使い古したおもちゃのようだ。直樹の目から光が消え、氷のように冷たい視線が二人に突き刺さる。

「そんなことを言った覚えはありませんが?働きぶりがよければ、と言ったはずです。それにあなた方二人は僕に貸しがある。五年前、僕が弁護をしなければあなたたちは詐欺罪で今も刑務所の中だ。……そのことを忘れるな」

そう吐き捨て、直樹は歩き出す。後ろから悲痛の叫び声が聞こえてきたものの、彼が気にすることはない。直樹の頭にあるのは弁護士としての仕事と香奈のことだ。

(そう、やっと手に入れたんだ)

香奈と翔吾が交際し、そこに妻が現れたのは決して偶然ではない。全て直樹のシナリオ通りなのだ。

不気味に笑う直樹を、月明かりがぼんやりと照らしていた。
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