【短編】宝石男子〜イケメンと学ぶ元素記号〜
 ミーンミーン

 ジジジジジジ

 街の中心部から離れたおばあちゃんの家は、周りが林で囲まれているからかセミの鳴き声がうるさい.。

 その大合唱の中、私はジリジリと暑い日差しの中おばあちゃんの家の庭にある小さな池のそばでしゃがんでいた。


「はぁ……」


 思わずため息をつきながら、つい先ほど渡された小さな箱を開けてみる。

 中にあるのは昔一度だけ見せてもらったおばあちゃんの指輪。

 小さい頃は綺麗な指輪だって純粋に思っていたけれど、今ならわかる。

 この指輪についている宝石は、価値の高い天然の宝石だって。

 伯父さんが一度鑑定してもらったって言っていたから間違いない。


「ダイヤモンド、エメラルド、サファイア、ルビー……」


 透明、緑、青、赤。

 それぞれの石を確認するように軽く指先でなでた。

 四大宝石って呼ばれる宝石の中でも特に有名なもの。それらが四つ連なってついてる。

 それほど大きいわけじゃないけれど、宝石としては小さすぎるってほどじゃあない。

 伯父さんの話では数十万は確実にするらしい。

 それを私が形見分けとして(ゆず)り受けた。

 昔から大きくなったら貰ってねと言われていたし、おばあちゃんの遺言にもちゃんと書いてあったからそれはいいんだけど……。
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