日々のこと

年齢とともに傷の治りが悪くなってきた。料理中のヤケド、顔のニキビ(吹き出物ともいう)、うっかり作った切り傷など、完全に跡がなくなるまでが長いし、とにかく若い頃と比べて治るまでに時間がかかる。
傷だけではない。あらゆる回復から時間がかかるのだ。ちょっと風邪をひいただけと思っても、思った以上に咳や鼻水、声枯れが続くなど、残念ながら若い頃とは違う。
それは心の傷も同じだ。
ちょっとした一言がひっかったり、相手がそれほどのつもりがなくてもこちらは寝られなくなったり、本気の失恋なんてしようものなら一年、いやもっと長い時間だって思い出して落ち込んでいられる自信がある。
新鮮な出来事が少なくなったからだろう。若い頃、幼い頃は日々が新しい出来事であふれ、次から次へと色々なことが起こって、忘れようと思わなくても、自然と他の出来事の強いインパクトによって傷は薄らいで、癒えていったのだ。
でも年齢とともにそういう新鮮な出来事は減っていく。仕方のないことだ。大人になることは、慣れていくことだともいえる。
そしてすっかり大人になった今、治りの悪い傷を見るたびに、うっかり人を好きになったり、失恋したりなんてことがありませんようにと思う。
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