あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
「やっぱりこの傘。浅黄くんだった。見間違えるわけないもん」


 千歳の反応は予想してたのとちがって淡々としている。


「歩いてたよね。女の子と。コレさして」


 まさか、見られてた? 繁華街のどこかで? 見てたなら声かけて来そうなもんだけど。凸られてたら彼女を名乗る謎の女と、あの子と俺でド修羅場になってたのか。千歳にまだ理性があってよかった。


「なかよく相合傘しちゃって……」


 うつむいてぶつぶつ言っている千歳がパッと俺をみあげた。


「あの子とつきあう?」

「……かもな」


 どちゃくそ嘘をついてる自覚があるから、昨日うまくいかなかったのを何かのせいにしたい気持ちがわきあがる。そう、例えばほかのやつといるときまで頭に浮かんできたコイツ、とか。


「……だめ」


 食いさがるのはいつものことなのに、無性にいらいらした。

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