あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
「……あんなにすきすき言ってたのに、もうそうじゃないってこと?」


 千歳がちいさく息をのんだ。


「雨、特別だって言ってたじゃんか」

「……」


 千歳が手をのばしてきて、すい、と顔にはりついた俺の髪をととのえた。そのまま、うれしそうな声をもらす。


「ほかのひとと相合傘したからおこってるの?」


 ぶわ、といっきに顔があつくなってだまりこむ。


「……」


 ニマニマしたまま、また髪の毛をいじってくる千歳をみても、さっきの苦しさはまだ残ったままだ。


「特別だって言ったじゃん……」


 ぼそ、とくり返す。
 泣きそうで、たまらなくなって、ぐっと息をのみこむ。


「お前はそういう軽いやつじゃないって思ってたのに」


 しぼり出すように言うと、雨が降ってるはずなのにしん、と静まりかえっているように感じた。

 ――……長い沈黙。

 ふと気づくと千歳の鼻をすする音がきこえた。まずい、こんなさむいとこに長居させて……。
 うつむいていた顔をあげて千歳のほうをみたら、ぎょっとした。

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