あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ

✫ scene 02

  ◇  ◇  ◇


 財布をひっつかんで玄関を出ると、家の前でにやけた顔をした千歳が立っている。


「お前、まじで最悪」

「えへ。ありがと、だいすき」


 いつも俺が断れなくなるようなこと言って、無理やりひっぱりだす。ほっとけばいいのもわかってるのに。でも、ほんとにひとりで行ったら困るし。


「暴漢がどうのとか言うならちゃんと着ろよ、足出しすぎ」


 ポーチの階段をおりながら文句を言うと、


「浅黄くんお母さんみたーい」

「お前なぁ……」

「いこ」


ヘラヘラ笑う千歳に手を引かれた。そのまま遠くから車の音がする夜道をふたりで歩いていく。ちなみに手は振りほどいた。

< 40 / 74 >

この作品をシェア

pagetop