あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
interlude
  ◇  ◇  ◇


「浅黄くん何味にしたの?」

「桃」


 わたしがソーダのかき氷を持って店の外で待っていると、遅れて注文した浅黄くんが白っぽいかき氷を手に、自動ドアのむこうからやってきた。


「ひとくちちょーだい」


 ぱか、と口をあけて待つと、浅黄くんは素直に「ん」と桃の欠片がのったスプーンをこっちにむける。
 たぶん無意識なんだろうなーとは思うけど、からかったりしてあーんしてくれなくなったらイヤだから、わたしも何気ない感じでパクっといく。

 今さら同じスプーン使うとか、あーんとかじゃわたしも浅黄くんも意識しないけど、フツーにみればカップルっぽいことなのに、気づいてない浅黄くんはぬけててかわいい。わたしのことすきじゃないって言ってるくせに。
 外堀うめられるし、牽制できるし……わたしにとっては得しかないから黙っておく。


「ソーダあげる」

「ん」


 お返しに水色のかき氷を浅黄くんの口に運ぶ。すんなり食べてくれる。


「パチパチす、る」


 つめたいからか、もごもごしながら浅黄くんが言った。


「ねー。ホッピングシャワーみたいなの入ってる」


 わたしも自分の口にソーダを放りこむとキャンディがはじけた。フルーツポンチの寒天みたいなのも入ってて、それをすくってまた浅黄くんにさしだす。


「具もあげる」

「いーの?」

「うん」


 浅黄くんが赤い寒天をぱく、と口にした瞬間、わたしは思わずにやけてしまう。


「ハート型だったからあげた♡」


 ――…もぐもぐしたまま睨まれた。

 でも、これくらいなら大丈夫。ぜんぜん怒ってない。
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