あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
 抱きついた肩がビクッと揺れる。振り向いた浅黄くんと目が合った、瞬間。


「さわんなブス」


 ――……嫌悪感しかない声といっしょに、バシッと腕を払われた。

 見たことない態度に固まっていると「チッ」と舌打ちが聞こえる。


「言ったよな。お前みたいなクソ女、大っ嫌いなんだよ。二度と顔見せんな」


 ドン、と肩を押されバランスを崩すわたし。あ、転ぶな、と思ったけど時間がゆっくりに感じられた。


「俺の知らないところでさっさと死ね」


 去っていく背中からはっきりと聞こえたのと同時に、べしゃっと青空にしりもちついた。


「……」


 のどの奥がつまったように息ができない。


「だから言ったのに……」


 いつの間にか隣に立っている小野寺くんがつぶやくように言った。


「……ま、ある意味止める必要ないんだけど。ぱっと見は可哀そうだからさ」


 うん。考えればわかる。傷つかなくていい。

 ――……でも、夢の中でも浅黄くんは浅黄くんだし、ほぼ本人。

 息ができない。くるしい。はやく空気を吸わないと……はやく――……

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