あしらってるつもりの浅黄くん SSまとめ
  ◇  ◇  ◇


 ――海、太陽。


 ゴールデンウィーク。俺は入会したダイビングサークルの合宿で沖縄にきている。
 5月から海に入れるなんてさすが南国! 最高だ! 受験から解放されての海は輝きがちがう、たぶん。

 ギラギラしてるアウトドア系サークルかと思ったけど、新歓の雰囲気もやわらかくて、先輩もかっこいいし、同期のことはまだよくわからないけど、今のところは結構いい選択できたと思ってる。

 ……あいつさえいなければ。

 俺につきまとう幼稚園からの幼馴染・千歳。どこで知ったのかサークルまで俺と同じにしやがった(ほかにパンの同好会に入ったらしい)。そんなに泳げないくせに。

 溺れたフリとかしてシャレにならない絡み方するな、と釘を刺したら「水難事故は泳げる人のほうが多いんだよ。浅黄くんこそ『Fラン大学生自然淘汰w』とかヤフコメ欄に書かれないでよね」と言い返されてしまった。Fランじゃねーだろ。
 今朝も当然、空港までべったりだったし疲れる。

 今はビーチで集合まで時間をつぶしているところだ。着替えおわった人からそれぞれ水際で遊んだり、さっそくかき氷を食べに行ったりしている。

 女子は着替えに時間がかかってるみたいだ。あいつ、「水着なにいろか当ててみてー」とか「いちばん最初にみてね」とか言ってうるさかった。更衣室で着るんだからどう考えても一番になんないだろ。ツッコんだら、そういうことじゃないらしくちょっと怒っていた。
 ……ともかくできるだけ千歳を避けないと。サークルでカップル認定されたらたまったもんじゃない。

 もんもん考えていたのを遮るように、がばっと背中に衝撃を感じた。


「浅黄くん!」

< 67 / 74 >

この作品をシェア

pagetop