モブ未満

5



「矢束にキスしたらってやつ、だれも無理だったな」
文化祭が終わって数日後、だれかがそんなことを話していて。


賭けは木下くんの勝ちだね。

賭けに参加もしてなかった僕だけど、まさか僕が勝つなんて誰が想像できたのか(もちろん僕もできなかった。そしてだれも勝ったことすらしらない)。
日を追う事に鮮やかに、彼女の姿が思い出されて、その度に思わず頬をおさえてしまう。


そしてあれから矢束さんとは。

「おはよう、木下くん」
「あ、おはようございます」
挨拶くらいはする仲になった。
毎朝挨拶される度にどきどきしてしまう。


勇気がなかなかでない僕だが、覚悟を決めて今度告白しようかと思う。
そしてこの間のキスの理由を聞くんだ。
結果もしふられたとしても、矢束さんのファーストキス(頬だけど)をもらったのは僕だということだけで、僕の高校生活は大成功ではないか。
だって、矢束さんは才色兼備で、人気者で、僕なんか本当は名前すら与えられない存在だったはずなのだから。

モブ未満だった僕が、彼女のストーリーのメインキャラになれるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら、僕は今日も矢束さんの美しい横顔を見つめるのだった。


Fin

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