こんなはずではなかったのだが…… ― 女嫌いな天才脳外科医は真実の愛に目覚める
1,相変わらず塩対応な幼馴染
「ほら優里、奥さまに挨拶して」
祖母に言われ、緊張しながらペコッと頭を下げる。
「木村優里です。小学四年生です。今日からよろしくお願いします」
 両親のお葬式の次の日、私は祖母が家政婦をしているお屋敷にやってきた。
 塔屋付きの水色のクラシックな二階建ての洋館。両親が死んで祖母が私を引き取り、今日からこのお屋敷の離れで暮らす。
 両親が亡くなったショック、新しい環境。祖母に『おばあちゃんと一緒に暮らすのよ』と詳細は告げられずに連れてこられて、これからどう生活していくのかわからなかった。不安でどうにかなってしまいそうだ。
 奥さまは四十代くらい。髪をアップにし、グリーンのワンピースを着ていてとてもお洒落。
 指に嵌めている大きなルビーの指輪がキラキラしていて魅入ってしまう。
「まあ、ちゃんとご挨拶できるの? 偉いわね」
 屈んで私を褒めてくれた奥さまに、ニコッと微笑んだ。
「おばさんは王妃さまみたい」
 とても優しそうな人でちょっとホッとする。

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