こんなはずではなかったのだが…… ― 女嫌いな天才脳外科医は真実の愛に目覚める

２，衝撃のキス

『お母さん、お父さん、どうして死んじゃったの？』
ポツリと呟いた言葉は、そのまま空気に溶け込むように消えた。
私の一方通行の問い掛け。
答えが返ってこないとわかっていても聞かずにはいられなかった。
あの日、激しい雨が降っていた。
塾が終わった後、車で迎えに来てくれるはずの両親は、交通事故で即死。父の運転していた車が逆走してきたトラックと正面衝突したらしい。
　塾でいくら待っても両親が来なくて連絡しようとしたら、私の携帯に病院から電話があって、塾の先生と病院に駆けつけると、両親は白いベッドで横たわっていた。
　外はずっと土砂降りの雨。
　両親の顔は青白く、目は閉じたまま。
　触れると冷たくなってて、これは悪夢なんじゃないかって何度も思った。
　私が塾に行ってなければ、両親は死ななかったかもしれない。こうなってしまったのは、私のせい……。
「お母さん、お父さん……行かないで！」
　泣きながら叫んだら、誰かが私の肩を揺すって声をかけた。
「優里、夢だ」
　低くて落ち着いた声。
　その声の主を私はよく知っている。