ひとたらしどうし
ぎゅっと、抱きしめられている。


先ほどのやわらかな抱擁とは違って、『抱きしめられている』という表現がぴったりくる、力強さ、で。


『大切にされている』と、


『好きで好きで仕方がない』


その両方の感情をいっぺんに、一心に受けている。


おずおずと、その背中に回した私のてのひらも、同じように白石さんに伝わっているといいな。


そんなふうに、願わずにはいられないやさしい時間。


「…ちょっと、もう…なんでそんな可愛いこと言えちゃうの」


拗ねたような、甘いような白石さんの口調。


「…や、べつに可愛くなんか…」


言いかけた私のコトバは、白石さんの大きな手のひらでふさがれた。


我慢できなくなるからちょっと、黙ってて。



「ほんとはもっと、違うふさぎ方したいんだけど、今はこれで」


ささやかれた声に、黙るしかない。


気持ちが通じて、同じ気持ちでいてくれるひとが出来たなんて。


この夜のことを、私は生涯忘れないと思った。






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