戯雨がめぐり逢わせた強がりな君
かつての私は、幸せな恋なんて、一生出来ないような気さえしていた。

それなのに、付き合い始めて3年目になる尚登くんとは、かなり順調…どころか、未だに熱愛状態である。

本音を言えば、まさか尚登くんと付き合うことになるなんて、出会った頃には1ミリも思わなかった。

あの頃の私たちは、恋に破れた者同士だったから。

中学から大学まで女子校だった私と、中高一貫の男子校から理系の大学に進んだ尚登くんは、お互い、年齢の割に恋には奥手だった。


初めて出会ったのは、私が社会人1年目の三冬尽く頃。

仕事からの帰り道、最寄り駅に着いた時には戯雨で、コンビニで傘を買うか、走って帰るか迷っていた。

「あの…よかったら入りませんか?」

そんな声のする方を見遣ると、大学生ぐらいの、人のよさそうな青年が居た。
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