溺愛社長の2度目の恋
第3話 これは持ってはいけない感情だ
「じゃあ、ちょっと付き合ってもらうよ」

私が婚姻届にサインしたのを確かめ、天倉社長が立ち上がる。

「えっと……どこへ?」

曖昧な笑顔で、彼を見上げた。

「婚姻届、出しに行かないといけないだろ
あと買い物もあるし」

「ああ、……そう、です、ね」

促され、私もソファーから立つ。
そうだよね、サインしただけじゃ結婚したことにはならないし。

引っ越しにあわせてTシャツとデニムパンツなんて汚れるの前提の格好だったので、着替えさせてもらう。
それでもやはり、ワンピースにデニムパンツで大差ないんだけれど。

天倉社長の運転で出発する。
車はドイツメーカーの、白のSUVだ。
ガレージにはあと二台、やはり高級外車のセダンと、コンパクトカーサイズの外車が停めてあった。

「車が必要なときは遠慮なく言ってね。
あいているほうを夏音が使えばいいよ。
あ、水色の車はダメだけど」

車を借りられるのは助かるし、借りるなら水色のコンパクトサイズがいいと思っていた。
どうしてあれはダメなんだろう
確かに、少し古い車ではあったけれど。

「あれは深里の車なんだ。
だから申し訳ないけど夏音には貸せない。
ごめんね」

謝る必要なんかないのに天倉社長が謝ってくる。
あの車はピカピカに磨いてあった。
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