ファーレンハイト/Fahrenheit

#02 電話の声

 葉梨将由は官舎の自室で電話をしている。
 ベッドに腰掛け、左足をベッドに乗せている彼の表情は、徐々に険しくなっていった。

「話してくれなかったから」

「……気持ちは分かる、けど……」

「それって結局、俺の事――」

「じゃあなんで、話してくれなかった」

 少しだけ声を荒らげた彼は上を向いて奥歯を噛み締めた。

「俺はもう、いい」

「そう。…………冷めた」

 電話の向こうの相手は、まだ彼に何かを言っているようだ。

「もう連絡しない。それじゃ」

 そう言って、彼は通話ボタンをタップして、スマートフォンをベッドに投げつけた。
 跳ねたスマートフォンは壁に当たって、大きな音がした。

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