「推しカプを拝みたいだけ」で王子の婚約者選抜試験に参加したのに、気がつけば王子の子を妊娠してました
 元々しっぺ返しを、ちょっとした腹いせのために準備しようとしたのも、ニーナ。
 そして、アレクサンドラはただニーナの提案にものすんごーく乗り気になっただけ。
 だが、ニーナはそのしっぺ返しの結果くらいはコントロールできると自負していた。
 リーゼのぶっ飛び行動に付き合わされた耐性もあるから、ある程度先読みはできるようになったと、自分のことを正確に理解しているつもりだった。
 実際、リーゼ絡みの、対処がクソほど面倒なハプニングがあろうと、ここまでうまく事を運ぶことができたし、これからもそうするつもり……だった。
 だが、そんなニーナですら、このエドヴィン王子とリーゼの急速な距離の縮まり方を異常にすら感じていた。

(気をつけるように、するべきだろうか?)

 ニーナの心にほんの巣食う良心は、毎晩毎晩、相方が現在は存在しない人間からするとただウザいだけの成果報告を犬のように尻尾フリフリしながらしてくるエドヴィン王子と会う度に警告してくれるのだが。
 ……そう。ウザいのだ。とにかく。

「ニーナ、聞いてくれ!今日もリーゼが……」
「はいはい」
「それで、リーゼが」
「はいはい」

 いつの間にか裏では堂々と呼び捨てにまでするようになったエドヴィン王子の笑顔を見る度に、ものすっごいイライラする気持ちを抑えることで精一杯だったニーナは、お花畑王子が一通り話すのに満足したタイミングでこう言ってやるので精一杯だった。

「リーゼ様に嫌われないように、お気をつけくださいましね」

 ちなみに、ニーナとアレクサンドラが伝授してやった、宝刀的口説き文句は、どうやらまだ言っていないらしかった。
 
 そんなこんなでやってきた舞踏会当日。
 リーゼ以外の3人の思惑が交差する、この国の行末すらも決めるであろう重要な日がやってきてしまった……。
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